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《2001年10月号No.195特集》

特集ゲストティーチャーと授業を創る

地域の手作り名人から学ぶ

−地域への愛着を共有する−

佐藤正寿(岩手・宮古市立高浜小学校)

1 二つのポイント

 ゲストティーチャーを招くことは、どの学校でも日常のことになったと思われる。
 しかし、「招けばそれでいい」というものではない。一発イベント的なその場限りの授業。打ち合わせ不十分なまま、全てをゲストティーチャーに任せきった授業。そのような授業であれば、ゲストティーチャーを招く効果は薄れる。
 私は次の二点がポイントと考える。
(1) ゲストティーチャーを招くまでの過程をど
 う工夫するか。(課題意識を高める工夫)
(2) ゲストティーチャーとの授業をどうセッテ
 ィングするか。(さらなる学びの促進)
 事前に「ゲストティーチャーにぜひ来ていただきたい」という意識を高めることが大切であ
り、学びをより促進させる授業スタイルがポイントとなると考えるのである。

2 単元「地域の手作り名人を探そう」

 この単元は、学区内にいる手作り名人を探し、そのよさを感じ取り伝えようというものである。
 子供たちが選んだ対象は「ひゅうず作りの名人」である。「ひゅうず」は宮古に伝わる郷土の手作りお菓子である。練った小麦粉に、黒砂糖やくるみ等の具を包み、熱湯で炊きあげる。
 「ひゅうず」を子供たちが選んだことは、授業を行う私にとっても好都合であった。実際に子供たちも作ることが体験できるし、名人を招いて行うことが可能であるからだ。
 ただ、その名人を招くまでどのような学習を展開するかが大切である。先に述べたポイントの@である。
 そこで行ったのが「ひゅうず」の調べ活動である。子供たちから出た疑問をもとに、次の六つのテーマについてグループ分けをして調べた。
■ひゅうずの名前の由来とその歴史
■ひゅうずの作られている地方
■ひゅうずの作り方
■ひゅうずの種類と売られているお店
■ひゅうずの栄養といいところ
■ひゅうずの思い出
 聞き取り、本、インターネット等から子供たちは追究し、調べたことをまとめ交流しあった。
 その過程で、知識や学び方技能を得ただけではなく、「実際に自分たちも作ってみたい」「名人からその技を習ってみたい」と思うようになった。課題意識の高揚である。そして、私の方で手作り名人を探し、地区婦人会長の鈴木光子さんにゲストティーチャーの依頼をした。
 今度はポイントAの当日のセッティングである。「ひゅうずの追究を続けたい」「技を見たい」「実際にひゅうず作りを体験したい」「名人との交流を深めたい」という希望から次のような内容とした。(授業は二時間連続)
1 名人へのひゅうず質問タイム(十五分)
2 名人のひゅうず作り実演(十五分)
3 ひゅうず作りにチャレンジ・試食(五十分)4 ふり返り・学びの発表(十分)

 鈴木さんと「学習状況(子供たちの作品提示)」「授業意図」「子供たちとの交流」等について打ち合わせをして、いざ本番である。

3 聞いた!作った!学んだ!

 授業当日。鈴木さんを家庭科室に招き入れる。
 授業の進行は私が行い、ゲストティーチャーの鈴木さんに学習の流れに沿って話したり、実演していただくという形で行った。
★ 質問タイムで調べ活動が生きる
 最初は、質問タイムである。子供たちは事前にグループで調べ活動を行い、まとめている。そこで、さらに聞きたいことをグループで吟味して代表の子が質問をした。
「ぼくたちはひゅうずのいい点で、昔から伝わっている・手軽に作れるということを聞きましたが、ほかにどんないい点がありますか。」
『何といっても好みによって中身を変えられるということですよ。今日はくるみを入れますが、何を入れてもいいんです。』
「ぼくのおばあちゃんは、サハリンから引き揚げてからひゅうずを食べて、こんなにおいしいものを初めて知ったと言っていました。鈴木さんの小さい頃のひゅうずの思い出は何ですか。」
『ものがない時代でしたら、ひゅうずは豪華なごちそうでした。「よくかんで食べなさい」と言われましたね。』
 子供たちには、事前に調べた内容をもとに質問をするように指示しておいたので、いい質問が出てきた。授業後に鈴木さんからも「皆さん、質問が上手で、いっぱい話してしまいました」と言って下さったほどである。
★ 実演で本物のすばらしさを知る
 一通り質問が終わって、いよいよ実演である。鈴木さんが説明をしながら、ひゅうず作りのポイントを教えてくださる。
 じっとその手つきを見る子供たち。小麦粉を練り、パッと形を作る鮮やかさに「さすが、名人」という声が自然に出る。熱湯から炊きあがったひゅうずを取り出した時には、「あ〜、できた!できた!」と歓声。
 作り方は調べて分かっていると言っても、目の前で名人が実演するのは、やはり特別である。
「本物だけが持つすばらしさ」である。
 名人の実演のあとは、子供たちのひゅうず作りへのチャレンジである。知識は身につけたものの、実際に作るとなると別である。でも、困っていると名人がさっと教えてくれる。
 熱湯からすくうと、湯気のたったひゅうず。かすかに香りもただよう。思わず「食べたい」という声が出てくる。試食では、「名人から教えてもらったひゅうずの味は最高」という声が自然に出ていた。
★ ふり返りで「学び」を自覚する
 このような体験活動で大切なのは、「学び」の自覚である。
 今回は最初に、「一言感想」を全員に話してもらった。それを私が「名人の技のすばらしさ」「ひゅうずのいい点」「ふるさとの味」といったようにいくつかの観点にまとめた。そして、「今日の授業で学んだこと」を、各自ワークシートに書き、数人発表させて授業を終えた。

4 「共有」した「地域への愛着」

 子供たちからが学んだものは「名人の知識」「名人の技術」だけではない。「地域のよさ」も感じ取ることができた。「このような名人が学区にいる」という喜びである。それは鈴木さんにとっても同様であった。「子供たちの積極性を嬉しく思いました」とのちほど挨拶された。
 ポイントを押さえてゲストティーチャーを招くことは、子供たちにとってもゲストティーチャーにとっても、「価値ある喜び」を共有するものになるのだ。今回の実践からそう感じた。